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 Keywords & Topics No5

26.消費者の権利


 ジョン・F・ケネディ大統領によって提唱された消費者4つの権利

 ①安全である権利 (Right to safety)
 ②知らされる権利 (Right to be informed)
 ③選択できる権利 (Right to choose)
 ④意見を反映させる権利 (Right to be heard)

1975年ジェラルド・R・フォード大統領によって
 ⑤消費者教育を受ける権利 (Consumer Education) が追加され、消費者5つの権利と呼ばれるようになった。

1980年に国際消費者機構(CI)が次の3つの権利を追加。
 ⑥生活の基本的ニーズが保障される権利 (Basic Needs)
 ⑦救済を求める権利 (Redress)
 ⑧健康な環境を求める権利 (Healthy Environment)

以上により「消費者8つの権利」と呼ばれる。これらの権利は、2004年施行の消費者基本法
にも明記された。日本国内において消費者が持っている権利であるとが明文化された。



27.muddling through 再論

keywords & Topics No4の24でイギリスにおけるmuddling throughの具体的ケースを三つ提示した。

最近、英国映画「アメージング・グレース」(Amazing Grace)に登場する政治家ウイリアム・ウイルバーフォースの半生を鑑賞(2011年3月)して、このKeywordを想起した次第。

また、同年2月の高校同期会においてロンドンに長く滞在していた友人から若き英国首相キャメロンの財政再建のための過激なリストラ計画に民衆が反発してキャメロン首相が暗殺されるとの噂が一部にあると聞いた。保守党と自由民主党の連立キャメロン政権の財政緊縮策をめぐり、いかにmuddling throughするかが大きな関心事である。
この二つに事例ここそが英国の伝統的・潜在的思想であるこのKeywordが潜んでいるのではないだろうか?

①政治家ウイリアム・ウイルバーフォースの奴隷貿易廃止運動

<ウィリアム・ウィルバーフォース>


28歳の若きウイルバーは10年間に亘り奴隷貿易廃止のために法案を議会に提出するが、多数の反対派により実現できず。この間、夢の中でも奴隷達の苦しむ姿にうなされ、失意のどん底に陥る。

38歳のとき18歳も若いバーバラと結婚し、彼女の励ましもあり再度、奴隷貿易廃止運動に取り組む。この間、議会には廃止派の議員は少数いたが、世代間の対立、ナポレオン戦争等の影響もあり、廃止法案は通過するどころか、売国的であるとして受け入れられなかった。

1807年ウイルバー48歳のとき仲間とともに議会運営策略を駆使して奴隷貿易廃止法を成立させる。
1833年、彼の死から1か月後にやっと奴隷制廃止法が成立した。

映画のタイトルは、奴隷船の船長であったジョン・ニュートン(後に牧師)が作詞した賛美歌「アメージング・グレース」から採られた。ニュートンは2万人の奴隷を奴隷船で米国などに送り込んだ苦い経験をもち、その悔悟から牧師になり、ニュートンがウイルバーに奴隷船の惨さを伝え影響を与えた描写が映画にでてくる。

②英国首相デ-ヴィッド・キャメロンの猛烈なリストラ計画



43歳の若さで首相就任(2010年5月キャメロン内閣発足)。「若手による改革」を唱えて出馬。右よりに傾きつつあった保守党を中道寄りに修正。長期政権への倦怠感から不人気に陥ったブラウン労働党政権を破る。

2010年10月、財政赤字解消のため第二次世界大戦後最大規模の歳出削減案を発表。
4年間で10兆円、公務員50万人の削減、軍事費の大幅削減。警官・兵隊、教師などの10%削減を掲げている。労働党からは「ミスター10%」と卓名されている。

この難局にあたり、連立を組んだ第3極の自由民主党ニック・グレック副首相も、選挙期間中の自分達の主張を引っ込めて「一つの政府」に邁進している。日本の連立政権とは大違いである。

キャメロン政権はリストラ計画だけでなく、新しい市民社会政策「大きな社会の構築」(Building the Big
Society)というビジョンが発表されている。その表題には「BIG SOCIETY NOT BIG GOVERMENT」と記されている。

 <「大きな社会の構築」の主要課題>

 ①コミュニティに対するより多くの権限付与
 ②コミュニテイでの活動的な役割奨励
 ③中央政府から地方自治体への権限委譲
 ④共同組合、共済組合、チャリティおよび社会的企業の支援
 ⑤政府データの公表

このように、財政再建と新しいBig Society 構築のためなりふり構わず奮闘努力するキャメロン政権のmuddling through(泥まみれになって切り抜ける)姿勢を応援したいものである。
今月(2011年3月)のCNNテレビでは、このキャメロン政権のリストラ計画に耐え切れず、大規模な抗議街頭デモの一部が暴徒化して店舗のショーウインドウを破壊する風景が放映されていた。

上記の①ウイリアム・ウイルバーフォースの苦難に満ちた「奴隷貿易廃止運動」と②D.キャメロンの必死な「過激なリストラ計画実践」の二つの事例に並び、昨今のEUの苦悩も英国の伝統思想muddling throughを受け継ぎ問題解決に向かうと筆者は密かに期待している。
現在多くの論者はギリシャ・スペイン・ポルトガル等の経済問題などをもってEUの政治経済統合は時期尚早などと批評している。これら論評はヨーロッパの底力の根底にあるmuddling through思想を看過した誤ったものと判断している。


28. 2011.3.11~東日本大震災~


2011年3月11日14時46分、宮城県沖130kmの海底を震源に発生したマグニチュード9.0、最大震度7.0の巨大地震と太平洋沿岸各地に押し寄せた大津波による未曾有の災害。
地震の規模は国内観測史上最大。

この地震により、場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.1mにも上る大津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。
大津波以外にも、地震の揺れや液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊などによって、東北と関東の広大な範囲で被害が発生し、各種ライフラインも寸断された。

東京電力福島第1原発は津波で電源を喪失、原子炉の冷却が不能となり放射性物質を放出する重大な事故に。原発のある浜通り地域を中心に、周辺一帯の福島県住民は長期の避難を強いられている。東北と 関東は深刻な電力不足に陥った。

2012年3月21日時点の被害状況は次のとおり。

  死者:1万5854人
  行方不明:3143人
  避難者:34万3935人(12年2月23日現在、ピーク時40万人以上)
  建物の全壊・半壊:38万戸以上
  停電世帯:800万戸以上
  断水世帯:180万戸以上
  被害額:16兆円~25兆円
  ボランティア:延べ約93万400人(12年2月19日現在)


今回の大震災に際し話題になった事項は、想定外リスク・企業の社会的責任・絆・共感・支援・秩序統制の遵守・助け合いの気持・ボランティア・義捐金・寄付・フィランソロピー等であった。
この中でも、企業の責任範囲の拡大(とくに東京電力の責任範囲)とリスクマネジメントの重要性を痛感せざるを得ない。

                      企業の責任範囲の拡大
               <河村幹夫『図解 統合リスクマネジメントの実践』より>

  バランスを欠いた
  利益追求志向⇒⇒⇒⇒⇒ 社会貢献的責任 ⇔⇔⇔⇔⇔ メセナ・フィランソロピー

  人権抑圧・安全性無視
  
環境破壊⇒⇒⇒⇒⇒⇒   倫理的責任  ⇔⇔⇔⇔⇔⇔ CSR

  不払い倒産⇒⇒⇒⇒⇒   経済的責任  ⇔⇔⇔⇔⇔⇔  内部統制・持続的成長

  法令違反⇒⇒⇒⇒⇒⇒   法的責任    ⇔⇔⇔⇔⇔⇔  コンプライアンス(狭義)


29.CSR(Corporate Social Responsibility)


 

企業の社会的責任(CSR)とは、企業が 利益を追求するだけではなく、組織活動が社会に与える影響に責任を持ち、あらゆるステークホルダー(消費者、投資家等及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。

<CSRの三つの次元>・・・企業と社会の相互関係から大きく捉えることが重要。

1.経営活動の在り方

社会的公平性・倫理性、環境・人権などへの配慮を組み込む。 環境対策、採用や昇進の公平性、人権対策、製品の品質や安全性、途上国での労働環境・人権
問題、情報公開等
→法令遵守・リスク管理の取り組みと企業価値を創造する積極的取組

2.社会的事業

環境配慮型商品の開発、障害者・高齢者支援の商品・サービスの開発、エコツアー、フェアトレード地域再開発に関する事業等
→新しい社会的課題への取組

3.社会貢献活動

企業の経営資源を活用したコミュニティへの支援活動
金銭的寄付と製品・施設・人材等を活用した非金銭的な社会貢献、さらに本業・技術等を活用した社会貢献
→戦略的なフィランソロピーへの取り組み
 <以上は谷本寛治『CSR~企業と社会を考える~』(2006年、NTT出版)による>


30.共生マーケティング


マーケティングの需要なキーワードとして4P、4Cやデ・マーケティングなどを今までに紹介してきた。

また、マーケティングの種類としては、インダストリアル・マーケティング、サービス業マーケティング、ノンプロフィット・マーケティング、国際マーケティング、エリア・マーケティング、タイム・マーケティング、イベント・マーケティングなどがある。

ここでは、低成長時代の新しい挑戦的な概念の「共生マーケティング」(Comensal marketing)を紹介しよう。
共生マーケティングとは企業と消費者、日本と世界 、人間と自然が共に生きることをダイ前提とし、利益より信頼を優先する自由市場経済におけるマーケティングをいう。(清水公一城西大学教授)

共生マーケティング「7つのC」

①Corporation(企業、非営利組織)、Company

 共生マーケティングの当事者。
 MIS(Marketing Information System)による情報管理によってトップは正しい意思決定を行い、
 Internal Communication(企業内コミュニケーション)を有効にし、CI(Corporate Identity)のコンセプトを忘れずに、信頼を得ながら利益を追求する。Competitor(競合会社)も十分考慮する。

②commodity(顧客満足型商品)
 ラテン語で共に便利な、共に幸せにする意味。産地を偽ったり、賞味
 期限を延長したりの商品偽造などは論外であり、消費者の視点に立ってニーズとウオンツを汲み取っ
 た信頼できる商品やサービスを開発しようという哲学。

③Cost(共に立ち上がるという原義)
 Priceだけでなく生産コスト、販売コスト、買い物コスト、社会的コスト等ひろくとらえる。
 地球環境コストだけでなく、子育てコスト、介護コスト等も企業が加味する。たとえば、化粧品会社が社内に託児施設を作って待機児童の問題に貢献し、介護をしている従業員への支援システムを作ることを社会的コストとして加味する。
 有料企業と福祉ビジネスとの社会的コストに関する共生によって介護関係の雇用の問題解決の糸口が見えてくる。

④Channel(流通経路、原義は運河)

 納入業者、製造業者、流通業者、消費者が共生できるビジネスモデルを創生する。
 生産者・製造者・流通業者が共生している食品会社や製造と流通が共生しているアパレル産業等がある。

⑤Communication(原義:意味を共有する)
 双方向型の共生の考え方にふさわしい概念。
 消費者の心を掴み(consumer insight)、広告等で提案(proposition)をし、絆(engagement)を作っていく。

⑥Consumer(消費者、生活者):次の4方位
 N=Needs(無くてはならない必須なもの)
 W=Wants(欲しいもの)
 S=Security(安全)
 EEducation(消費者教育、情報提供)

⑦Circumstances(外部環境):次の4方位

 N=National & International(国の政治的・法律的環境おゆび国際環境)
 W=Weather(気象、自然環境)
 S=Social & Cultual(社会、福祉および文化的環境)
 E=Economic(経済環境)

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